島村英紀『夕刊フジ』 2023年11月17日(金曜)。4面。コラムその518「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

和歌山県が防災メールでまた誤報 種類あまりにも多く
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「和歌山県が防災メールでまた誤報…約2万6000人に「津波予報」 地方自治体による災害・避難情報配信、種類あまりにも多く」

 和歌山県が防災メールで、10月31日にもまた誤報を出した。気象庁から情報が出ていないにもかかわらず約2万6千人に「津波予報」と配信してしまったのだ。

 これは気象庁が直接、出しているものではない。全国の自治体が都道府県別に出しているもので、自然災害の犠牲者ゼロを目指して、防災気象情報に関する対策の一環として携帯電話へのメールサービスを行なっているものだ。この場合は和歌山県の責任になる。


 じつは和歌山県は先週この欄で報じた10月5日にも伊豆諸島の鳥島近海を震源とする地震のときに出ていた「津波予報」の文面の中に「津波注意報」と記載されていたのをシステムが誤って抽出し、和歌山県の情報と結び付けて「注意報」を出してしまったのだ。


 それだけではない。今年1月にはなんでもないときに「津波注意報」が誤って出された。10月31日午後3時すぎには、やはりなんでもないときに防災配信サービスで「津波予報」に関するメールを送信したが、2分後に誤報であったことがわかり、15分後に誤報であったことを知らせるメールを配信しなおした。メールはすでに約2万6千人に配信されていた。


 和歌山県は「再三の誤報により皆様には多大なるご迷惑、ご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」と平謝りだ。


 それぞれの携帯電話会社の緊急速報メールサービスを活用して、サービスの対象エリアにいる住民に災害・避難情報を配信する地方自治体が増えている。


 内容も緊急地震速報、津波警報、に限らず、気象に関する特別警報、災害・避難情報(Jアラートにて配信される国民保護情報など)と増えてきている。


 例えば、津波注意報や津波警報、大津波警報、有効性が疑問視されている東海地震予知情報も、地方自治体が携帯電話会社経由で出す。


 配信元も気象庁(緊急地震速報や津波警報)だけではなく、配信元が各省庁・地方公共団体に拡がった。弾道ミサイル情報(Jアラートの国民保護情報)や航空攻撃情報、ゲリラ・特殊部隊攻撃情報、大規模テロ情報、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく感染を防止するための外出自粛要請までも、それぞれの中央官庁経由で地方自治体が出すことになっている。


 それだけではない。具体的には災害・避難情報、高齢者等避難避難指示、緊急安全確保もそれぞれの中央官庁経由で地方自治体が出す。


 被災のおそれのあるエリアに一斉配信という「手軽さ」が受けたものだ。あまりに多すぎないだろうか。一般人から見れば、気象庁から直接であろうと中央官庁からだろうと、一刻を争う情報だけに、一瞬の間違いは許されないのだ。


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