島村英紀『夕刊フジ』 2014年10月24日(金曜)。5面。コラムその74 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」

「太陽系外惑星」に高等生物が生存する?

 先々週は皆既月食、今週にはオリオン座の流星群があった。久しぶりに星空を眺めた人も多かったに違いない。

 かつての「地球物理学」という学問はいくつかの大学では「地球惑星科学」になっている。地球をもっと知るためにはほかの惑星を研究しなければならない時代なのである。

 その学問の最新の話題は「太陽系外惑星」。地球は太陽系にある惑星のひとつで、火星や木星のきょうだいだ。しかし、宇宙には太陽のような恒星(こうせい)はあまたあり、ぞれぞれが太陽系の惑星のような「子分」の星を従えている可能性が高いことが知られるようになった。

 地球もそうだが、惑星は太陽のように自分で光るわけではない。このため直接、望遠鏡で見ることは出来ない。「親分」恒星が「子分」惑星にわずかに振り回される動きを観測したり、惑星が恒星の前を横切るときに恒星の明るさがわずかに減ることを観測したり、という間接的な手法でようやく見つかるのが「太陽系外惑星」なのだ。

 研究の進歩によって1990年代半ばから「太陽系外惑星」が実在することが確かめられ、見つかった数は年々増えている。とくに今年になってからは昨年の10倍も見つかって、いまや1800個にもなっている。これからもっと増えるだろう。

 なぜ「太陽系外惑星」が研究の焦点になっているのだろう。それは私たち人類のような高度の生物が地球だけにたまたま生まれたのだろうかという根元的な疑問に答えるためだ。

 かつては地球上の生命は特別な偶然が揃ってはじめて出来たと思われていた。しかし近年では水や温度やある種の元素が揃えばどこにでも生命が生まれると考えられるようになっている。つまり地球は特別な星ではなく、ありふれた惑星のひとつになってしまったのである。

 「太陽系外惑星」のなかには条件が揃っていて地球のような生命が生まれて進化してきている星がある可能性が高くなっている。SFの世界ではない。あるいは人類よりも、もっと進化した生物がいても不思議ではない。

 だが、現在の学問はまだそこまでは探れない。いまは「太陽系外惑星」のぞれぞれの大きさや水の量が少しずつ分かりかけている段階だ。「スーパーアース」といわれる地球より1〜5倍ほど大きな地球型の惑星もいくつか見つかっている。生命現象の証である酸素があるかどうかはこれからの研究なのだ。

 地球の生命の源、海がある惑星も見つかっている。「へびつかい座」にある「GJ1214b」という惑星は海に取り囲まれて、その海の深さはなんと600キロもあることが分かった。地球の海の深さの平均は4キロしかない。「水の惑星」と言われる地球全体の水の量は0.023%だが、この惑星の水は10%もある。

 地震、火山、戦争、飢餓。人類にとって大事件が地球には繰り返し起きる。

 だが、何億という星のなかには、これら大事件とは関係のない高等生物が生きている星があるかもしれないのである。

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