ほとんどの人は知らないが、3月5日は、小惑星が地球を「かすめる」日だ。
この小惑星「2013 TX68」は2013年に見つかって、地球に向かって飛んでいるのが分かっていた。ただし、太陽の方向から飛んできていたので、わずか3日間だけの観測のあと、太陽のまぶしい光の中に入って、見えなくなってしまっている。
そのため、観測データが十分ではない。軌道にはあいまいさがあり、小惑星の大きさも知られていない。しかし2013年にロシア西南部の町チェリャビンスクに落ちた隕石よりも大きい小惑星であることは確かだ。チェリャビンスクに落ちた隕石は、その衝撃波で東京都の面積の7倍もの範囲で4000棟以上の建物を破壊し、1500人もの重軽傷者を生んだ。
「2013 TX68」は地球にぶつからないことは分かっている。だが、どのくらい近づくのかは分からない。近ければ地球から1万7000キロ、遠ければ1400万キロだ。
1万7000キロといえば、地球の直径の1・3倍ほどにすぎない。放送衛星や気象衛星など、地球に対して静止している静止軌道を回っている人工衛星は高度約3万6000キロに位置している。1万7000キロはその半分以下なのだ。
他方、1400万キロならば、月までの距離の35倍もある。地球からははるかに遠い。
この小惑星は、ずっと太陽の光の中を通ってきているので、いまだに見えていない。しかし3月5日の大接近以後は太陽から外れ、逆に太陽に照らされて、よく見えるはずだ。そして、正確な大きさや、形も分かる。自転の速さも明らかになり、岩なのか、金属なのか、氷なのかといった物質の見当もつくかも知れない。
軌道も正確に調べられる。次にこの小惑星が地球に接近するのは2017年9月28日だと分かっているが、そのときに地球にぶつかるのか、ぶつからないで通り過ぎるだけなのかも判明するはずだ。
ここ数年、米国アリゾナ州で「カタリナ・スカイサーベイ」という名の「地球近傍天体」サーベイ(観測計画)が行われている。
「2013 TX68」を発見したのはこの観測計画だ。地球に近づいている天体を調べる計画で、アリゾナ大学の月惑星研究所が行っている。近くの「レモン山サーベイ」やオーストラリアの「サイディング・スプリングサーベイ」と提携している。
この観測の能力は高い。たとえば2006年に発見されたほうき星(彗星)の大部分をこの3つのサーベイが占めた。
しかし「2013 TX68」クラスの小惑星、つまり直径数十メートル以上の天体は、地球の近傍に100万個もあると考えられている。だが、そのうち発見されているのは1万個ほどにしかすぎないのだ。
私たちは、将来の大地震や火山噴火だけではない、地球に落ちてくる小惑星という未知の危険も知らないまま、毎日をすごしているというべきなのだろう。
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