読売新聞(1994年11月5日夕刊)の書評
『地球がわかる50話』

 地球の形はなぜ丸いのか?地震の起きる原因に密接な関係があると言われている「プレート」って何?地球の中はどうなっているの?---。北大教授として、海底での地震の観測を長年手掛けてきた著者が、地球に関する素朴な疑問に答える岩波ジュニア新書。

 持ち上がるスカンジナピア半島や、割れていくアフリカ大陸、そして昨年の北海道南西沖地震。こうした地球規模のダイナミックな現象を、地球内部の運動と関連づけて説明する。

 中学生程度でも理解できる平易な書き方だが、地震波で地球内部構造を探る「トモグラフィ一」や、地球の歴史解明のかぎを握る「プルームテクトニクス」、金星や火星などと比べることで地球の成り立ちを考える「比較惑星学」など、最先端の固体地球科学の研究が幅広く紹介されている。

(館林牧子)

『赤旗』(1994年10月17日)の書評
サイエンス『地球がわかる50話』

 地球は「時々刻々自分でその姿を変えていく」といいます。「この生きて動いている地球」について科学は、どこまで理解しているのか、ちょうど五十話で紹介しています。

 話は、「地球の形」から始まって、「地球の皮,プレート」、「地球の身・マントル」、「地球の芯(しん)・コア」ヘと進み、最後が「地球の歴史」。これに、「地球科学の先端機械」の紹介が四話加わり、全部で五十話です。たとえば、「地球はなぜ丸い」では、星が丸いのは、大さな引力のせいであることをたくみに紹介。「ヒマラヤのような巨大な山脈も、海に浮かぷいかだのように、地球の表面に浮いている」話や、四億年前には、「一日の長さが約22時間」で、自転はだんだん遅くなっているという意外な話も。

 著者は、自分たちで開発した海底地震計をもって、地球が活発な動きをしているあらゆるところへでかけていきます。その体験談がところどころにおりまぜられています。大西洋のまんなかにある火山島のアゾレス諸島の海岸にはペンダントや首飾りに使われるペリドット(カンラン石)がいっばいあリ、島じゅうがもともと日本の花であるアジサイにおおわれているというような楽しい話もあります。

 プレート運動の原動力や、地球の磁極の反転(地球磁石の北極と南極の反転)の原因、地球の中心部の核のなぞなど、解明されていない問題も紹介されています。これらのなぞに、研究者はどう挑もうとしているのかも興味深い中身です。

(前田利夫)(岩波ジユニア新書・六五○円)

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