『北海道新聞』書評 2002年10月22日(火曜)夕刊(表紙のカラー写真付き)
地震災害から教訓を
『地震学がよくわかる−−誰も知らない地球のドラマ』島村英紀著

 地震発生のメカニズムなどを研究している学者たちの裏話をまとめた「地震学がよくわかる」 (彰国社)=写真=がこのほど、発刊された。著者は北海道新聞文化面の「魚眼図」の筆者の一人で、 北大地震火山研究観測セ ンターの島村英紀教授。

  震源地から地球の裏側まで達し、再び戻ってくる地震波のことから、高感度の地震計が地上では雑音が多くて観測が難しくなり、深海の海底に観測場所を移した話・・など、教室では学ぶことのできない地震に関するさまざまな話題が盛り込ま れている。

  「過去の地震災害から教訓を学んでほしい。地震は人を殺さない。地震で人が死ぬのは、人間がつくった物によってだ」 という著者の言葉が心に残る。

1800円。 (文化部の小華和 靖 記者)

『共同通信』 2002年10月配信の書評
(現在、掲載を把握しているのは、山梨日日新聞(10月27日読書面)
、河北新報(11月3日読書面)、神奈川新聞(11月3日読書面)、信濃毎日新聞(11月3日読書面)、福井新聞(11月3日読書面)、徳島新聞(11月3日読書面)、東奥日報(11月8日読書面)です)

『地震学がよくわかる−−誰も知らない地球のドラマ』島村英紀著

 国の地震対策は妥当なのか。高層ビルや原子力発電所の耐震設計は大丈夫なのか。 海底地震計による観測で世界の海を渡り歩いてきた著者が、一般向けに地震学の現状 を辛口の表現で解説している。

 阪神大震災後、国は活断層の危険度調査などに乗り出したが、「活断層がないとこ ろでも大地震は起きることを政府は広報していない」と批判する。高層ビル建築も、50年も前の米国の地震を標準にした耐震実験でパスしている現状を嘆き、「今後の大地震で大丈夫という保証はない」と指摘。原発の設計基準にも疑問を呈し「岩盤の上に設置してあるからどんな揺れにも耐えられるとの政府の説明は最近のデータから は否定されつつある」と説く。

 「何が危険で、何が分かっていないか国民に正確に知らせることが必要」と願う著者の、学者としての良心の叫びが聞こえてくる。

 (彰国社・1800円) (藤田紳一 記者)

『日経サイエンス』 2003年1月号(日本経済新聞社)掲載の書評「新刊ガイド」
『地震学がよくわかる−−誰も知らない地球のドラマ』島村英紀著

 地震学がよくわかる誰も知らない地球のドラマ  島村英紀著 彰国社本体1800円

  研究・観測の最前線から前兆現象の心理学的な背景まで,地震学をさまざまな方向から取り上げる。

 エピソードはユーモアたっぷりに語られているが,世界の地震の現場を知り尽くした著者だけに防災に対する考え方は厳しい。

 「地震が来たときに被害を少なくする方策こそが肝要」「そのために地震学の最新の知識を使ってほしい」というメッセージにぜひ耳を傾けたい。

『日刊工業新聞』 2002年12月2日号掲載の書評「新刊」
(表紙のカラー写真付き)
『地震学がよくわかる−−誰も知らない地球のドラマ』島村英紀著

 何が書いてあるのかと、わくわくするような目次である。子供のころに読んだ科学解説書を彷彿させる見出しが並んでおり、それがまた魅力。しかし、著者はれっきとした地震学者で、最前線の研究を紹介している。素人に理解できるか不安なところだが、難解な言葉はなく、地震をナマズで表現した図までついている。

 また、地震学者というなかなか報われない立場の哀感がユーモラスに記され、飽きることなく読み進められた。

 研究が進むにつれ、地震の予知は以前に考えられていた以上に困難なことが分かったという。だが、予知以上に重要なのは、震災を最小限にとどめる方策である「地震は人を殺さない、人間がつくった物が人を殺すのだ」。地震学者が言うだけにその意味は重い。

(彰国社刊=03-3359-3231、1800円)

『北海道新聞』 2003年1月18日(土曜)号掲載
(朝刊一面下の常設コラム)
『卓上四季』

6433人の命を奪ったのは、20秒ほどの強い震動だ った。 この間に建物が数多く倒壊し、多くの人が生き埋 めになった。あちこちで火災が発生した。阪神大震災。

以後、観測体制が強化された。調査研究も進んだ。が、分かったこ とは「地震予知は考えられていた以上に難しい」 という事実らしい。北大島村英紀教授の著書「地震学がよくわかる」(彰国社)にくわしい。

島村さんによると、政府は最近、地震予知をあまり言わなくなった。代わりに柱にすえたのが「きめ細かな震度の予測」と「将来地震が起きそうな場所を探す活断層調査」である。

これが手ごわい。震度予測のためには地下のやや深い地盤を知る必要 があるが、都市全域の調査はとても無理。脚光をあびている活断層調査だが、活断層だけを注意していれば地震に備えられるわけでもない。

なのに政府はただ多額の予算を地震研究に投入していることばかりを強調する。 島村さんは怒る。「大事なのは、何が危険で何が分かっていないかを国民に正確に知らせることではないのか」と。

「完全な地震予知ができない以上、地震が起きた時の被害を少なくする方策こそ肝要」。最前線の地震学者の思いだ。本にはこんな言葉もある。「地震は人を殺さない。人間のつくった物が人を殺す」。 大震災から八年。体験の風化が懸念されるいま、 もう一度かみしめたい。

(山本哲史論説委員)


『日本経済新聞』 2003年8月21日号掲載
『春秋』(朝刊1面のコラム)

 大地震が起きた後には必ず、「そういえばこんな前ぶれが……」と、たくさんの人から多種多様な“前兆現象”が報告される。空中での発光、異様な雲、鳴きやまない犬――。こうした事後に判明する前兆の中には、あいまいな記憶をひたすら前兆と思い込む例も少なくないという。

▼いつでも起こりうる、ふだんならすぐ忘れてしまう現象が、大地震という強烈な事件の影響で、何か特別な意味のあることとして記憶される。これを心理学では「認知的なバイアス」と呼ぶ。時には実際には全く観測しなかった事象すら、記憶として「再生」されることがあるという。

▼前兆らしい現象があっても何も起きない場合や、前兆がなくても地震が起きた例、前兆も地震もなかったケースなどは、ほとんど記憶に残らない。前兆らしき現象があって地震もあったという事例だけが強調されて心に刻まれる。これを「錯誤相関」と呼ぶ。

▼地震学者の島村英紀さんが、著書の中で紹介している菊池聡さんら心理学者の警告は、示唆に富んでいる。バグダッドの国連事務所が爆破され、デメロ特別代表ら20人が死亡した。イラク情勢は一段と深刻化し、戦争の大義をめぐる疑惑は晴れない。9・11以後の世界の読み方に、認知的なバイアスや錯誤相関はなかっただろうか。

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