島村英紀『「地球温暖化」ってなに?科学と政治の舞台裏』の書評と読者の反応

新・原詩人」 33号(2010年12月) 掲載の書評
江原茂雄(詩人)

地球温暖化は、もう、言われて久しい。

二酸化炭素が増えて(いわば「地球の掛け布団」となって)、太陽熱が蓄積し、極地や高山の氷が融けて海面が上昇し、ツバルとモルディブなどの低平な島国から順次水没していく。地球上の気候や生態系が変化し、各地の農業にも大きな被害が生じる・・・等々。

この本を一読してまず思ったのは、今日までの学説、また最新の科学的知見を易しい言葉で解説していることだ。この程度だと中学生くらいなら読み下せるだろうから、ぜひ全国の市民の、また学校の図書館に置いてほしい。

次に、太陽系や地球の誕生から説き起こし、地球の大気の特性、その組成の増減を生命の誕生以前から論じるという、とんでもない時間軸の長さである。

地球物理学者である著者のフィールドはこのように広く深い。と同時に(またそれ故に)、今日の温暖化の原因(人類の産業化)とその危険について十分の注意を払いつつも、その他の不確定(自然的)要因もあり得るといって、短兵急な俗論的断定を慎重に避けている。学者の良心と誠実さとはこういうものかと感心させられる。

しかし、地球環境とか温暖化といえば、各国の、また産業界の利害がからんでくるので、国際的な政治駆け引き(金銭取引)の問題にもなってしまうことを著者は指摘する。

おわりに、地球という星が有する自然は、空気も水も、すべて一回きりのものであることを著者は訴え、これらを浪費し環境を破壊することなく、人類は「地球とともに生きることが必要なのである」という、いまの人々があまり気づいていないあたりまえの結論に至って本書は終わる。

蛇足ながら、ホッキョクグマを主人公にしたイラストも面白い。


 読者の反応

2011.1.21 「貴君のジャーナリストとしての能力は、私などは足元にも及ばない

 やっと『地球温暖化ってなに? 科学と政治の舞台裏』を読み終えました。このところ、外出することが多かったのです。

  たいへん面白く読みました。地球温暖化について、とくにその中心問題になっているCO2について、極めて幅広く、分かりやすく解説していると思います。貴君のジャーナリストとしての能力は、私などは足元にも及ばない。
 
 文章は読みやすいが、私がデスクなら、「じつは」という接続詞?と、「(な)のだ」「(いる)のである」という書き方を、すこし削る。強調も多すぎると却って逆効果ではないか。

 誤植が少ない(私は見つからなかった)のは、編集者も著者も、実に丁寧にゲラを読んでいるのだと思う。最近のようにワープロソフトで原稿を書くようになって、これはたいしたことだと思う。

2011.1.11 「気候だけでなく、専門の地球物理から説き起こしているところがよかった」

たいへん面白い。気候だけでなく、専門の地球物理から説き起こしているところがよかった。

2011.1.10 「”高級な啓蒙書”で、地球物理学者としての豊かな見識と、地球環境に対する見解が真摯に訴えらていて、感銘を受けました

「高級な啓蒙書」で、地球物理学者としての豊かな見識とともに、地球環境に対する、島村さんの見解が真摯に訴えらていて、感銘を受けました。

『地球温暖化』に関心をもっている人々に読むことを推薦してまわっています。地球のことを知りたいと思っている人々にも勧めています。

2011.1.4 「地球温暖化とひとことでいっても、奥は深いと知りました

地球温暖化とひとことでいっても、奥は深いと知りました。

科学はどこまで科学で、どこからが政治なのか。

わかったつもりにならず、一から疑ってみなければ、と思います。

2010.10.21 「大変興味深く、三度ほど、じっくり読みました

あの本は、いろいろな観点から地球環境を論じていて、科学的に証明されていること、未だよく判っていないことをはっきり区別した説明など、たいへん興味深く、三度ほど、じっくり読みました。

あれだけ広い角度から、しかも判りやすく解説した本は少ないと何人かに紹介して、少なくとも2、3人は購入してくれたと思います。(理科系技術者)

2010.11.13 「いつもながら広範で説得力のあるお話、感動しました

「地球温暖化ってなに?」拝読。
いつもながら広範で説得力のあるお話、感動しました。ひとにもすすめています。

2011.1.21 「昨貴君のジャーナリストとしての能力は、私などは足元にも及ばない」

 御著『地球温暖化ってなに? 科学と政治の舞台裏』を読み終えた。このところ、外出することが多かった。
 たいへん面白く読みました。地球温暖化について、とくにその中心問題になっているCO2について、極めて幅広く、分かりやすく解説していると思います。貴君のジャーナリストとしての能力は、私などは足元にも及ばない。
 
 文章は読みやすいが、私がデスクなら、「じつは」という接続詞?と、「(な)のだ」「(いる)のである」という書き方を、すこし削る。強調も多すぎると却って逆効果ではないか。

 誤植が少ない(私は見つからなかった)のは、編集者も著者も、実に丁寧にゲラを読んでいるのだと思う。最近のようにワープロソフトで原稿を書くようになって、これはたいしたことだと思う。

一級建築士の方のこんなブログもあります。「この本がわかりやすいのはCO2問題の他にも地球の環境に大きな影響を与えている事柄を記載している点です」だそうです。

このほか、こんなブログもあります。
「地球温暖化の話は既に科学の問題では無くなっていると思われますが、そうであってもやはり科学者には出てきて欲しいところです」だそうです。

2011.8.14 「昨年6月に、既に原発の危険を見事に指摘しておられるのには頭が下がりました

、「地球温暖化ってなに?」には恐れ入りました。
 その懇切な解説は教えられることが多かったのですが、昨年6月に、既に原発の危険を見事に指摘しておられるのには頭が下がりました。
 どうぞ、これからも市民のための学問を広めて下さい

2011.9.01 このほか、こんなtwitterもあります。
「原発のことを考えいくとどうしても地球温暖化についてどう考えるかに辿り着く。個人的には島村英紀の「地球温暖化って何?」という本が分かりやすさで言えば一番かなと思っている。
  この本で興味深かったのはこの部分「政府が03年に発表したの中央防災会議の東海地震被害想定には原子力発電所が被害を受ける事は全く考慮されていない。同様に新幹線事故も想定から除外された。その理由は「2例ともある程度の確かさで予測ができる範囲外」だから。連中、最初から想定する気ゼロだ。
 今度の震災前に地球温暖化と地震と原発のこの3つをリンクさせ著作で語っていたのは、私の知る限りでは島村英紀さんと広瀬隆くらいだったかな。他にも数名いたと思うけど、読んでいないのでちょっと分からず。」だそうです。


2014.1.09 「福島の事件が見事に予見されている点も感動的です。新聞記者には書けない科学者のセンスが光っていると思います

『地球温暖化ってなに?』を拝読しました。大変分かりやすい文章で書かれていて、なおかつ地球の歴史を踏まえた温暖化の仕組みと、国際政治の怪しげな舞台裏 が明晰に説明されていて素晴らしかったです。福島の事件が見事に予見されている点も感動的です。新聞記者には書けない科学者のセンスが光っていると思います。


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