島村英紀の裁判通信・最終・番外編
2011年1月26日24時、執行猶予期間が終わりました。

判決後、裁判所から「執行猶予のしおり--日本の法秩序維持のために」、とか「執行猶予中のmustとnot」とかいった注意書きでも来るのかと想像しましたが、まったく、なにも来ませんでした。また、執行猶予期間が終わったときも、なんの知らせもありませんでした。

執行猶予とはどういう仕組みなのか?
「執行猶予とは、裁判で刑の言い渡しはするものの、その執行を一定期間猶予し、猶予期間を経過したときは刑罰を受けることがなくなる制度です。期間内に再犯をすれば刑を執行するという威嚇のもとに再犯を防止する一方で、前科を背負い続けるという不利益をなくし、更生に役立てる目的の制度です。」

【参考】 「
私はジャーナリストですが、執行猶予というのは、事実上、島村さんがお勝ちになったことだと思います。行動や発言に制約があるわけではありませんので、ぜひ、ご活躍ください」という激励もありました。

執行猶予をつけられたものは前科者になるのか?
 
「刑の執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間を経過した場合は、前科登録が抹消されます。
  刑の執行が゜なかった事になりますから前科は付きません。
  従って資格取得等の妨げにはなったり、たとえば公務員になれないといったことはありません。


執行猶予期間は、厳密にはいつ終わるのか?
「執行猶予4年なら裁判確定の日から3年経過すれば猶予期間が終了します(刑法25条)。裁判確定の日とは,判決日の翌日を1日目とし14日目までが上訴(控訴,上告申立)期間であるから15日目が確定日です。この場合には2007年1月12日判決でしたから1月26日が確定日です。例外は上訴期間の14日目が土日なら翌日月曜日には確定せずその翌日火曜日に確定します。もっとも上訴は休日でも可能です。裁判所には当直があるからです。
 それゆえ2007年1月26日から4年経過した2011年1月26日の夜中午前零時で猶予期間終了です。」


 裁判通信」の編集者だった小塚直正氏が、この「事件」をじつに要領よく、まとめてくれました。

 島村英紀は2006年2月1日から、取り調べのため171日間、札幌拘置所に拘置され、懲役3年執行猶予4年の判決を受けました。問われた罪名は詐欺ですが、詐欺の対象であるノルウェーのベルゲン大学では、「詐欺をされた覚えはない」と証言しました。

 しかも「売った」とされた「海底地震計あるいは、こちら)」が北大に残っていて、ベルゲン大学はなにも文句はいっていませんでした。

 つまりベルゲン大学が支払ったお金は「共同研究費」だったのです。ただベルゲン大学が、石油会社からの予算獲得のために形式上「買った」形にしたかったのです。本当はベルゲン大学の事情でした。

 さらに、入金したお金は、検察がいくら調べても、私用に使った形跡はなく、すべて研究費に使われていました。当初の罪名は「業務上横領」でしたが、途中から「詐欺」に変わりました。

 しかし裁判では負けました。

 厚労省事件と同じく、「検事がストーリーを先に書いて事件をでっちあげた」裁判でした。

 島村は地震学者として「地震は予知できない」として、政府が進めていた地震予知政策に反対していました。

 あとから考えると、北大教授のままだったら、なにごともなかったでしょう。

 ところが「極地研究所所長」に選ばれてしまったのです。

 発言力の大きさが忌避されたと思っています。

 北海道のマスコミをはじめ各メディアは、検察リークだけを掲載しました。


 その後に受けとったメールと手紙

2011.1.28 ある法曹関係者から。
今でも、一審判決が十分に説得力を持つものではなかったと思っていますが、一方では、当時の高裁刑事部の構成からみて、そこで一審判決が覆るという可能性も低かったかも知れません。

その意味では、控訴を断念することによってそこで要するであろう多くの労力と時間を、沢山の著作活動に使われた先生のご決断は、誠に優れたものであったと思います。社会的にみればその方がどれだけ有意義であったことでしょうか。

猶予期間中の精神的負担は本当に重いものがあったと思います。今回その重荷からも開放された訳で、本当に良かったと思います。

どうぞ今後とも益々ご健康に留意され胸を張ってご活躍下さい。

2011.1.29 ある出版関係者から。
とりあえず、おめでとうございます、と言うべきなのでしょうか?

こういった研究費の問題に関しては、 東大の軽部征夫先生も研究に関して疑惑がありましたが、(こちらは、問題があると思います)、軽部先生は切り抜けて、東京工科大の学長になっているのですから、おかしい気もします。

どちらにせよ現在の石川知裕議員の小沢一郎問題での録音でバレたことをはじめ、現在の検察が成果主義になっていることと切り離せない気もします。

2011.2.2 ある科学者から。
執行猶予期間が終わって、また、あらためて腹立たしくなったかも知れませんが、これから更に志高くご活躍されん事を願っています。

失礼ながら、こわいものは何も無い。

この成り行きを生かして、大活躍して頂きたいと願っています。こんな有利な立場にたち、しかもこんなに能力に恵まれている人はめったにいないのではないでしょうか。

自分は何も出来ないくせに、けしかけるような失礼な事を言って、お詫びしますが、応援する気持をお伝えしたつもりです。


2011.2.8 ある南極科学者から。
執行猶予も無事に終わり、 裁判の方もすっきりと解決との御事、よろしうございました。

この間お元気でご活躍を続けられたことに敬意を表する次第です。

これを機会に、さらに一層のご活躍を期待しております。


2011.2.7 ある大手化学メーカーの技術者から。
いい知らせを嬉しく思います。

貴兄の勇気と忍耐力には敬服しております。ますますのご活躍を!

2011.2.10 ある気象庁関係者から。
先生、執行猶予の期間が終了したのですね。

よかったですね。どうぞお元気で、これまで以上のご活躍をお祈りいたします。

2011.2.12 私の大学の先輩から。
先ず、執行猶予終了おめでとうございます。といっても、失礼ながらもうとっくに執行猶予は終わったものと思っていましたので、逆にびっくりしたのが正直のところです。

貴殿のウェブサイトで裁判所からは何の通知も無かった由、ただ刑の執行も前科も付かないからといって、これ以上の災難はないと言って喜ぶべきかも知れませんが、170日余も刑務所に拘置し冤罪であったと賠償も詫びもない検察の横暴・腐敗ぶりに今更ながら怒りを覚えます。

また、これまでの裁判記録や経緯を振りかえって、なんとも解せないのが北大(北海道大学)の態度です。

第三者から見てここが元凶の発祥地ですから、どういう摩擦からこんなことになったのか、多分複雑な人間関係があって当事者にはまだ公表できぬ時期かも知れませんが、学会の腐敗振りも相当なものと考えています。

これが今の日本なのか、これが人の世の常なのか、老年の感慨です。


2011.2.12 元ジャーナリストから。
長い間ご苦労様でしたね。

池田信一氏を含めていろいろな人の応援があったとはいえ、本人はよく耐えた、というか、まっすぐ顔を上げて堂々と歩いておられたことに敬服します。不思議な強さ、と常々思っていました。

まあ、ひどい陥れ裁判だったというか、北大(北海道大学)当局の卑劣なありようにはさすがに驚きます


2011.2.13 あるジャーナリストから。
前科が消滅したとのこと、おめでとうございます。

今の検察批判の嵐を考えると、島村先生の事件が起きたのが少し早すぎましたね。もう少し遅ければ、検察の不当なでっち上げ事件の典型と言えそうな、そんなケースだったと思います。

じつに残念です。


2011.2.13 ある科学者から。
執行猶予期間が、終わったとのこと、いくら冤罪とは言え、やはり御同慶のいたりです。

詐欺罪というのは、販売価格が不当か否かというだけの議論で十分なはずなのに、そのような事実の証明がなされないまま成立させると言うのは、言語道断と言わざるを得ません。

また入金したお金の使途が、私用に使われていれば、横領罪も成り立つと思いますが、それは検察が証明できなかったそうですね。

となれば、(北海道大学として受けとる仕組みがなかったので)「個人口座へ入金させた件に関する始末書」程度の問題だと思いますし、裁判では、当然、無罪になったはずの事件だと思います。

ある知人の裁判官にこの件につき、「検察官も裁判官もおかしい」と話したところ、「裁判官といえども、実質的には官僚だからな」という返事が返ってきました。

また、私の先輩で、各官庁の高級官僚を渡り歩き、人事院の最高幹部になられた方にも、この件を「おかしい」と話したところ、「文部科学省の方針か何かに反対したのではないか?」と言われました。この2人の発言は、「おかしい」と言うことを間接的に認めたものと、私は理解しています。


2011.2.13 ある南極科学者から。
ながいことお疲れさまでした。

「訳も分からず礫の雨に遭遇した」と言ったらよいのでしょうか、察するに余りあります。それにしても単に「お目出度うございます」で済む話ではないと思います。ここまで意思を貫き、頑張って来られた先生の気力、体力に感服しました。深く敬意を表したいと思います。

世間の風はお天気同様、時に厳しく、時に暖かく気まぐれなのでしょうか。それでも「風雪に耐えた大木」として後に続く人のランドマークとなって頂くことを切にお願いしたいと思います。


2011.2.13 あるジャーナリストから。
おめでとうございます。

もともと、冤罪と思っていましたが、形式においても、晴れて過去から自由になられ、なによりと思います。


2011.2.13 ある研究者から。
島村英紀さんのウェブサイトを驚異と敬意をもって拝読致しました。4年もよく辛抱されましたね。

検事もさることながら、世の中、大学内にも悪意のある人間がいるものだと、実感しました。

今後とも、益々お元気で、自信をもって御活躍下さい。


2011.2.14 ”パーロ・ボラッチョ”が咲く地球の反対側から。
長い間の心労など大変だったでしょうが、晴れて白紙となり、おめでとうございます。

日本の検察官の実態の一部は、現代にあってはとんでもないことで、至近のニュースや元外務省職員の佐藤優氏などのコメントなどから様々な様相が語られています。

島村さんの件がそれにつながるものだとしたら非常に残念なことではありますが、それに囚われて無駄な時間を浪費することなく、前方に向かい進んで行かれることを願っています。

取り敢えずご祝福の言葉まで。

いまブエノスアイレスは、”パーロ・ボラッチョ”(酔っ払いの木)の最盛期で、街路にも公園にも、桜色の大型の花を咲き誇らせています。夏の花ですのでかつて先生もご覧になっていることと思いますが、桜の花見ならずこの花の下で遠い空から祝杯をあげさせていただきましょう。


2011.2.15 ある大学の先生から。
やっとすっきりされて、本当によかったですね。

この間、強く有意義に過ごされましたこと、素晴らしい精神力と体力に頭が下がります。

益々ご健勝でご活躍をお祈り申し上げます。


2011.2.18 あるジャーナリストから。
先生が晴れて自由の身になられた由、本当にお喜び申し上げたいと思います。

検察官がストーリーを作った冤罪。

先生の話を聞いたときに、私もひどい!と思いました。

当時は検察がそんなことをするわけがない、と一笑に付されたかもしれませんが、昨今では「ありえる」とみんな頷いてくださるのではないでしょうか。

いずれにしても、粘り強く先生が今の境遇を勝ち取られたのですね。


2011.2.25 ある研究者から。
何はともあれ、自由の身になられ、良かったですね。

悔しいことが山のように有り、うらみが尽きないと思いますが、これからも島村さんらしいご活躍を続けられることを願っています。


2011.2.27 ある編集者から。
 完全に自由の身になられたとのこと、本当によかったです。

 もとより、えん罪だと思いますが、完全に自由になられたことには、私自身胸をなで下ろしました。

2011.2.13 ある大学の先生から。
島村さん、冤罪の軛から解放されること、及ばずながら、ともに喜びたい。政界、官界、メディア、そして学会までもが、異端者を排除する動きが助長されています。

2011.5.11 ある科学者から。
期限が切れるのは今年だろう、と思っていましたが、日にちの計算がどうなるのか分からず、3月頃かな、秋かな、と推測していました。やっと昨日、貴ウェブサイトにて、1月に晴れて猶予が満了したことを知りました。

 「おめでとうございます」は当てはまらないように思い、「お疲れさまでした」は"Good job!"と労をねぎらう感じなので、やはり「ご苦労さまでした」が最もふさわしい気がします。

 今後とも、ご活躍を期待しています。

2011.5.12 アルゼンチンの科学者から。
This is one of the best news I have received since long time.  I am very happy indeed to hear that our good friend Hideki has been found completely innocent of charges.  I had never a minimum doubt about his absolute honesty.  I do hope he will visit his friends in Argentina in short time.

2008.12.26 ある法曹関係者から。
 裁 判の結果は、裁判所も国家機関のひとつだということをあらためて確認したにとどまったことは、なんとも残念に思っています。

 それにしても、今回の一連の「事件」は、なんともおかしな事件だと思っています。たしかに結果論としていえば、ベルゲン大学とのやりとりや、その後の事務処理にあたっては、別の処理方法がまったくなかったというわけではないかも知れません。しかし、それはあくまでも結果論にすぎません。

 過去の事実を事後的に詮索し、しかもそれをなんらかの「意図」をもって行うとすれば、通常の人間行動を捉えて「事件」とすることは容易です。完璧な人間行動など、およそあり得ないからです。むしろ、完璧に見える人間行動ほど怪しいと思います。本気で悪事を企むものほど「完璧」を装うからです。

 その意味でも、今回の事件が「事件」となった背景には、やはり何らかの「意図」があったのでしょう。とくに、最初に「事件」化した北大(北海道大学)の「意図」を、私は大変、疑問に思っています。

 すくなくとも、北海道大学の「事件」の処理は、あまりにも悪意に満ちていたように思います。北海道大学は今回の「事件」を予断なく、誠意をもって調査すべきでした。

 北海道大学はこれを怠ったか、あるいはなんらかの「意図」をもって「調査」であるべき場を、はじめから「糾弾」の場にしたのではないかと思っています。現実の世界がきれいごとではすまないということは承知しているつもりでも、なお、一般社会が考える「学問の府」にはあるまじきことであったように思います。げんに北海道大学が描いた「事件」のストーリーと、のちに検察側が描いたストーリーとは、まったく違ったではありませんか。

 しかし、いまさらそれを言っても詮無いことかも知れません。いまとなっては、島村さんのその後の精力的な著作活動などを拝見し、これらのご著書がどれほど世のため人のために役立つかということに思いを馳せることが出来るのを、なによりの救いと思っています。

 なにかとご苦労も多いことと存じますし、不遇を感じられることも多いと思います。無念の思いも、世の不条理を嘆くお気持ちも禁じ得ないことかと思います。しかし、今回の「事件」をもってしても、島村さんの科学者としてのご見識は微動だにしていないことを、その後の多くのご著書が示しています。これは素晴らしいことだと思います。


 その後に名前をあげてもらったブログなど

 あるブログ「体制は危険人物を排除する」から。「いまや時の人、前福島県知事の佐藤栄佐久氏も、北方領土問題で投獄されている鈴木宗男氏も、あるいは、経済学者の植草一秀氏も、宗主国の大方針に挑戦したがゆえに、国策捜査で排除されているのだろう。そして、地震予知など不可能だ、という本を書かれたがゆえに、冤罪にはめられた島村英紀氏も」だそうです

 あるブログ「北海道大学の島村英紀元教授は共同研究するノルウェーのベルゲン大学から海底地震計を売って欲しいと求められました。地震計は操作が困難で、開発者の島村英紀氏がいなければ、宝の持ち腐れになります。「形式的でも」という依頼をのみましたが、北海道大学は外国の小切手は受け取れないと拒否され、代金は個人口座に振り込まれ、共同研究に使われ、地震計は島村英紀元教授達が管理し続けました。何故か、北海道大学が島村元教授を業務上横領で告訴し、2006年2月1日詐欺事件で逮捕されました。

 ここまで書いても、検察が事件をでっち上げるのはいつもの事だと思うのですが、被害者が何故か「ベルゲン大学」というのは、呆れてものが言えません。ベルゲン大学教授達は騙されたとは思っていないと法廷で証言しましたが、判決は執行猶予付きの有罪判決でした。

 詐欺事件で有罪になると最低でも懲役3年になり、実質無罪である執行猶予は懲役3年以下なので、裁判官も無罪だとわかっていたでしょう。だけど、無罪判決を出しても75%の確率で逆転有罪判決が出る現実を考えると、執行猶予付きの有罪判決にした方がいいと考えてしまいます。東電OL殺人事件で1審で大渕敏和判事が無罪を出しても、2審で逆転有罪判決が出てしまう上に、法務官僚の手によって左遷させられてしまいます。停止中の陪審裁判なら、被告人控訴も出来ない代わりに検察官控訴も出来ないので、こんな事は起きないでしょうが、せめて憲法39条の二重の危険の精神に基づき、検察官控訴を廃止して欲しいものです」だそうです

 あるブログ私は元北大教授・地震学者の島村英紀氏が冤罪逮捕された時の氏御本人の文章を一気に読んだことがあります。

氏は逮捕に至った瞬間から,勾留,判決までの4年という長きにわたる期間を,科学者らしい精緻な目と並々ならぬ理性と感性のバランスの良さを併せ持つ人間だからこそ乗り越えられたのだということを,私に教えてくれました。

私は世の中に結構多くの頻度で冤罪というものがあるのだろうということは感じていましたが,その人本人の文章からそれをストレートに確信することができたのははじめてで,感動しました」だそうです

 ある研究者のブログ誰も思いつかない発想で知的世界を切り拓こうとする研究者ほど、日本で研究することは危険ということになる」、そして「裁判の中で、ベルゲン大学の共同研究者が「詐欺に遭ったとは思っていない」と証言しているにもかかわらず、判決は有罪。誰も被害者のいない「犯罪」で有罪になる理不尽さと、筆者の淡泊な筆致と強いコントラストを成して深く印象に残った。大学に所属する研究者として、これはとても他人事ではない。大学の経理に関する規則は文部科学省の省令に定められており、研究方法の進展に対応しきれていない。「国際化」を謳いながら、外国の研究機関から研究費を受け取ることができない上記の例にも見て取れるし、観測装置を外国に持っていって共同研究するときの手続きの煩雑さは身をもって経験している。規則に何も定められていないことを研究者が自腹やリスクを背負う必要も間々ある。このような場合、規則に定めのない処理をすることが問題とされるのだ」だそうです
 あるホームページへのコメント
島村英紀著「私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。」 (講談社文庫) をお読みになることをおすすめします。世界的に名を知られ、地震予知には極めて否定的な地震学者である氏が、理不尽な容疑で起訴され、裁判にかけられ有罪になった経緯と、氏が上告を断念した理由が述べられています。

氏は、友人から忠告されたそうです。日本の裁判では「執行猶予」がついたらそれは裁判官が検察と被告の双方に配慮した結果で、執行猶予はそれが明けさえすれば無罪と何の変わりはなく、上告しても上級裁判所も検察の面子を無視することはないから、完全無罪を勝ち取ることはほとんど不可能で、その間どれだけの時間と労力を浪費することか。 というような内容だったと思います。

意地を押し通して人生で最も活躍できる時を無駄にするか、執行猶予が明ければ無罪と同じという実質を選んで政治理念の実現に尽くすか、それ以外の選択はないのです。日本の裁判制度は「正義」「真実」とはかけ離れたもの」だそうです

 あるブログから。国から詐欺罪で訴えられ、有罪となり、彼は裁判のバカらしさにあきれて控訴を断念し、そのまま有罪が確定した。 この事件は、検察側・弁護側の主張が全く同じで、詐欺か否かの判断だけが異なるという異常な事件であった。 主張が同じということは、詐欺事実が認められないのに有罪とされた訳であり、彼が裁判所に失望したのも頷ける。

 島村は北大から詐欺罪で告発され札幌地検に逮捕、起訴された。しかし、この詐欺の被害者とされたノルウェーの大学の代表者が法廷で詐欺にはあっていないと証言し、更に研究費の私的流用も検察側は一切立証できなかったにもかかわらず、判決は懲役3年、執行猶予4年となった。

 結局、著者は171日に及ぶ拘禁をなんとかやり過ごし、そして裁判で敗北する。詐欺に遭ったと思う人も居ない、不適切な金のやり取りはない、金の私費への流用はない。どうしてそれで有罪にできるのか。

 この国の裁判官は検察の方しか見ていないという現実がある。著者が指摘する通り、判決は勿論、起訴に至るまでの流れはほぼ検察の狙い通りになる。濫用される法、被疑者を尊重しない司法。


 直接名前をあげてもらわなかったが、関連するブログやtwitterなど

 @hkawa33 河村 宏 2011.5.22
ザ・スクープSPの市川寛元検事が語る佐賀農協事件の真相は衝撃的。不正なことにNOと言えない未熟な人間が主任検事をつとめたと告白。関与した検事全員が「不起訴」という意見を持ったが検事正の「起訴」の一言に従って起訴。無罪判決後トカゲの尻尾切り。権力を握る「エリート」の未熟さが怖い。


小野昌弘のブログ 2013年08月11日 「東京地検特捜部には大学の研究費不正事件を取り扱う技量も資格もない」(ちなみに、私を逮捕して取り調べたのは、札幌には東京地検特捜部はないので、それにあたる「特別刑事部」でした)。


なお、イラストはイラストレーターの奈和浩子さんが『地震学がよくわかる---誰も知らない地球のドラマ』のために描いてくださったものです。今回の内容とは関係がありません。

ノンフィクション島村英紀『私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。』から「取調室」と「取り調べ」
ノンフィクション島村英紀『私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。』から「獄中のラジオ」
(気の弱いNHK関係者の方は読まないでください)
ノンフィクション・獄中での「読書記・書評・著者への思い」
この「逮捕連行劇」と「獄中記」は2007年10月、講談社文庫(『私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。』)として、大幅に加筆して、2007年10月に刊行されました。)

島村英紀著『私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。』(講談社文庫)へ
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ノンフィクション・島村英紀の家宅捜索・逮捕・連行劇
ノンフィクション・島村英紀の獄中記
海底地震計・海底地震観測とはどのようなものなのだろう
悪妻をもらうと哲学者になれるなら:海底地震学者は「哲学者」になれる
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島村英紀が書いた「もののあわれ」

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