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社説
くろしお社説

能登半島地震 日向灘地震への備えは万全か

2007年3月27日
 最大で震度6強を観測した能登半島地震は海底の未知の断層がずれて起きた。予測が難しく、不意を突かれた格好だ。日本列島では今回のような地震がどこで起きても不思議ではない。

 本県でもいつ、どこで起きるか分からない。国の地震調査委員会によれば、日向灘でマグニチュード(M)7.6前後の地震が30年以内に発生する確率は10%程度といわれている。

 私たちはもう一度、建物の耐震補強や津波対策、情報伝達網の整備、子ども・高齢者など災害弱者対策など足元の備えを確実なものにしておきたい。このことが天災被害を最小限に食い止めることになるはずだ。

■予知できない直下型■

 今回の地震の震源地は石川県輪島市の南西約30キロの能登半島沖で、震源の深さ約11キロと海底の浅い部分で起きた。長さ約21キロ、幅約14キロの断層が約1.4メートルずれたと推定されている。M6.9、輪島市などは震度6強だった。

 能登半島付近では1729年以降、M6以上の地震は計六回起きている。いずれも震源地は離れているし、今回動いた断層は過去に地震が観測された記録はない。活断層が突然、動き始めるわけだから予測のしようがない。

 震度の割に人的被害が少なかったのは1995年の阪神大震災(M7.3)、2000年の鳥取県西部地震(同)、04年の新潟県中越地震(M6.8)などのように、直下型地震でなかったことが幸いしたという。

 国内には未知の活断層も多く、中越地震や今回の地震もよく知られていない活断層だった。海底地震研究第一人者の島村英紀氏は著書「公認『地震予知』を疑う」(柏書房)で「直下型地震は予知観測も、予知する学問的な根拠もない」と指摘した。どこでも直下型地震は起こり得るということだ。

■被災への即応態勢を■

 本県内陸部、沿岸部にも活断層と疑われる個所は数カ所ある。活断層のずれで直下型地震が発生したと思われるのは1935(昭和十)年の高岡地震(M4.6)である。被害が少なかったため、いまでは一般的に忘れられている。直下型地震があったことをあらためて認識し直すいい機会だ。

 だが、何よりも怖いのは日向灘地震である。沖合5、60キロで起き、震源地は深さ2、30キロ。地震のメカニズムはプレート(板状の岩盤の層)間の地盤がぶつかり合って跳ね上がるときに起きる。小さい地震は年に2、3回発生しているが、M7以上の地震が10年から20年の周期で発生している。日向灘は“地震の巣”なのだ。

 古い記録だが、江戸初期の1662年に宮崎市青島沖で推定M7.6の地震が発生。付近にあった「外所」という集落が津波とともに海中に陥没した。死者は約200人。いまでも地震や大津波の怖さが語り伝えられている。

 地震による人的被害の大部分は倒壊した建物の下敷きになったり、落下物に当たったりして起きている。阪神大震災の死者の約8割は建物の倒壊が原因だった。被害を少なくするには建物の耐震性確保が重要だ。市町村ごとの津波対策のためのハザードマップづくりも急ぎたい。

 独居老人や外国人への連絡態勢は大丈夫か。道路寸断のときの手段は…。想定される発生に備え、被災を小さくし、被災に即応する態勢を日ごろからいかに整えるか。このことが大事だ。

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