今月の写真
この車は、いったい何年、ここに駐車しているのでしょう(アルゼンチン・ブエノスアイレス。1990年撮影)
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南米アルゼンチン・ブエノスアイレスの裏町にはわびしさが漂う。ほかの大都会の裏町もそれなりにわびしいものだが、ブエノスアイレスはほかのわびしさよりも深くて暗い。
それは、かつてアルゼンチンが黄金時代にあって、そのころに作られた欧州にもめったにないような豪華な町並みや大劇場が残っているまま、落ちぶれてしまったからだろう。
この写真は1990年の末に撮った。かつては美しかった欧州風の町並が続く石畳の裏通りに、すでに動かなくなった車が止まっている。向こう側のトラックは、いったい何年、いや何十年、ここに止まっているのだろう。1930年代に作られたトラックである。右後輪が外されて、代わりに木箱が支えになっている。
日本をはじめ、「先進」国では、リストアして復元する需要が多いから、まちがいなく高価で引き取られていくはずのこの車も、ここアルゼンチンでは、あまたのゴミのひとつにしかすぎないのである。
手前の1960年代の米国車も、ヘッドライトもフロントグリルも、片方のワイパーも、どこかの別の車に使われるために、持って行かれてしまったのだろう。
しかし、アルゼンチンの人々はこちらが驚くほど楽天的だ。それがせめてもの救いなのである。
【追記】この1930年代のトラックの「現役の」姿の写真を2016年に掲載するとは思いませんでした。