今月の写真
観光でなければ生きられない人々は必死なのです。

これは2000年に今までにないほどの火山性地震が頻発した福島・磐梯山の地元が作って地元から東京などへと繰り出した「観光安心」キャラバンが、東京・池袋などで配布したパンフレット。2020年に始まった新型コロナウィルスもそうだが、観光でしか生きられない人々は必死なのだ。

磐梯山の1888年の噴火は19世紀日本最大の噴火だった。大規模な山体崩壊が起きて形が大きく変わっただけではなく、五色沼が作られた。犠牲者は500人近かった。(右の写真は島村英紀が定期航空から撮った空撮。左の写真外に猪苗代湖があり、右が北になる)。

ここでは2000年に火山性地震が急増して一日400回を超えた。40年前に地震計が置かれて以来、最も多い地震だった。


やがて山頂直下で起きる低周波地震や火山性微動もたびたび観測されるようになった。火山性微動とは地震計が捉える連続的に続く振動で、地下のマグマの動きと直接関連するものだと思われている。これも40年来初めてのことだった。


当時は「噴火警戒レベル」がまだ導入されていなかったが、これらの「前兆」のために磐梯山は登山禁止になった。


だが、間もなく噴火するのではと考えられていたのに、噴火しないまま、火山性地震はおさまってしまったのだ。


登山禁止は気象庁ではなくて地元自治体が決める。このため、気象庁が渋い顔をしているのに、夏の観光シーズンを迎えた地元自治体は登山禁止を解除してしまった。


そのときに地元福島県は全国の地震・火山学者にアンケートのメールを送って、見通しを聞いた。私も聞かれた。


アンケート後、県からお礼のメールは来たが、肝心の集計した結果や、そもそも何人に聞いて何人から返事が来たのかについては、ついになにも教えてもらえなかった。アリバイづくりに使われたのにちがいない。(島村英紀「夕刊フジ」連載の340から)


「主催:有志の会」というのが意味深長である。「観光協会」の一部には違いないが、福島県を含めての地元の必死の訴えを表している。「ペンション学生誘致連合会」や「修学旅行誘致会」があるのは、はじめて知った。

学問サイドでも、噴火予知はまだまだ、努力しなければならないのだろう。




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