今月の写真
除雪スコップがこれほど「専門化」するのは、さすが北国です

 2017年1月に札幌を訪れた。昨年の12月に、例年にないほどの雪が降った札幌だが、人口100万を超える世界の大都市で、札幌よりも寒いところはカナダやロシアなどにいくつかあるが、一冬の累積の積雪量が6メートルにもなるところは、ほかにはない。

 このため、この大量の雪を除雪するのが市民の冬の日課になっている。

 めったに雪が降らない日本の南部で、たまに雪が積もると、文房具の「下敷き」や「屋内用のマット」で雪かきをしているが、東京あたりのホームセンターでも、近頃は除雪用のプラスチックのスコップを置くようになった。しかし、もちろん一種類しかない。

 これは札幌のホームセンターの店頭。除雪用のスコップも、あっという間に専門化している。「軽くて雪を跳ね上げるのに便利」なスコップやら、「多くの雪がかけるワイドタイプ」など、何種類もの専門化したスコップを売っている。しかも、除雪に肝心な幅や長さのほか、使う人のことを考えて、0.4kgとか0.53kgという重量まで、10gの精度で、正確に書いてある。

 ちなみに、札幌では除雪のことを「雪はね」という。雪の比重が軽くて、低温ゆえ雪玉には握れない雪を「はねる」のが除雪なのである。

 奥行きが110ミリなどというのは、浮世絵の版画家の銘刀にも似て、特殊な用途には威力を発揮するのである。

 そのうえ、東京で売っている除雪スコップとちがって、「柄」がついていない。「柄」はほかのスコップと共用できるからだ。少しでも安く、そして場所をとらないための工夫だろうか。それとも、名刀を選ぶように、使用者が最適のものを選べるようにしているのだろうか。

 北国の札幌の人は、冬の経験から多くのことを学び、身についている。交差点を曲がって四輪ドリフトに陥った乗用車を、一瞬の逆ハンドルでドリフトを止める「技」を普通のおばさんが身につけている町なのである。除雪にも多くの経験があり、それに応える商品のバラエティもあるのは、北国の生活から来る知恵なのである。

 なお、後ろに見えるのは、最近話題の札幌アパホテル。南京事件否定の書籍が各部屋に置いてあるというので、2017年2月に開催される第8回冬季アジア大会のために中韓を含め選手団などの貸し切り宿舎となる公式滞在ホテルとして、大騒ぎになっているところだ。

 

島村英紀が持っているアフリカの面
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