出版後に気がついた訂正
『私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。』 (講談社文庫、初版)を出版した後で、以下の間違いに気がつきました。申し訳ありません。
 は、2008年6月25日に出た第五版で直しました。
なお、
のほとんどは第二版(2008年1月発行)では、直してあります。
また、197頁についての訂正
()は第三版(2008年2月)で直しました。
(なお、さらに間違いがありましたら、ご指摘いただければ幸いです)


ミスプリント(間違い)

91頁9行と93頁-3行(マイナスは最後から数えての行数)。「軽塀禁」とあるのは「軽屏禁」の間違いです。

これは、監獄法時代の言葉です。未決拘禁者については、私が収容されていた2007年半ばまで使われた制度です。この後、(2006年6月の法改正があり、2007年6月施行)(未決拘禁者について)、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の151条で「閉居」「閉居罰」ということになっています。(註):東京の弁護士の方に指摘していただきました。

107頁-2行(マイナスは最後から数えての行数)-108頁1行:徳島ラジオ商事件。「死後再審で名誉が回復された」の記述は間違っていませんが、「死刑判決を言い渡した」は間違いで、この事件では、被告の富士茂子さんには、死刑判決は出ていません。懲役13年の判決を受け、仮出所まで8年半たって出所されたあと、再審請求をされていましたが、無罪判決を勝ちとる前に亡くなられました。日本の裁判史上で唯一、死後再審が行われた裁判です。

(註):東京の弁護士の方に指摘していただきました。

117頁4行 「これによって、二〇〇九年から一般人が裁判官を務める裁判員制度が導入される。」を、「これは、二〇〇九年から一般人が裁判官を務める裁判員制度を視野に入れたものである。」にする。

(註):東京の弁護士の方に下記のように指摘していただきました。
 「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」は2004年(平成16年)5月に成立し、2009年(平成21年)5月21日から施行されます。
  実態としてこの刑事訴訟法改正は裁判員制度と密接な関係がありますが、いちおう別の法律なので、「これによって」というのはやや不正確かと思われます。また、この改正刑事訴訟法の施行は、2005年11月1日です。(2005年6月22日の官報138号に施行期日を定める政令が出ています。)

117頁6行 「法的に保証されたものになる。検察側が持っている証拠を、弁護側がすべて見られるようになるのである。」は間違いで、「検察側が持っている証拠について、一定の要件のもとで弁護側が見られるようになった。」が正確ないい方です。

(註):東京の弁護士の方に下記のように指摘していただきました。

本当にそうなればよいのですが、現在の制度はそのようになってはいません。被告人側が開示を求めた一定の範囲の証拠について見られるようになったにとどまります。
 刑事訴訟法316条の15、316条の20に基づき開示請求をすることとなっています。
これまでとの違いは、
 「1:一定の要件のもとで「検察官手持ち証拠」についての開示請求権が被告人側の権利として規定され、2:防御準備に重要な一定類型の証拠について被告人側主張提示前の開示が認められるようになった。」ということになります。
(日本弁護士連合会裁判員制度実施本部編「公判前整理手続を活かす」(現代人文社)14ページ参照)

120頁、6〜7行:「裁判長以外の二人の裁判官は別の曜日に単独で裁判官を務めるからだ。」を「裁判長以外の二人の裁判官は別の曜日に単独で裁判官を務めるからだ。ただし、任官後、五年経っていない若い裁判官(判事補)には単独の法廷は任せられていない。」に直す。

(註):裁判官には「最高裁判所判事、判事、判事補、簡易裁判所判事」という四つの区分があり、高裁、地裁、家裁の裁判官は判事と判事補が務める。判事補とは任官後(*)、10年以下の裁判官のことで、このうち、通常の裁判(**)を単独で行えるのは満5年を経過した判事補だけである。つまり5年経過していない判事補は、単独では裁判が出来ない仕組みになっている。

*) 弁護士や検事から裁判官になった場合は、「法曹資格取得後」で数える。
**)家裁の審判や簡易裁判所での裁判は例外。

私の裁判の場合は、左陪席(本文235頁)の清水光裁判官は任官後、まだ5年以下だから、単独の法廷は任されていない。

140頁、7行。「朝食に砂糖入りのきな粉がついている。担当看守に聞いたら麦飯にそのままかけて食べるのだという。北海道の習慣らしいが、33年暮らした私は知らなかった」の項目には、長野県(上田市周辺)で育った60歳代の読者から指摘があり、長野ではごちそうだった。とくに砂糖が入っているのは、とてもごちそうで、嬉しく食べた、ということでした。きな粉は貴重な蛋白源だったのでしょう。しかし、北海道小樽市で育った70歳代の読者は、食べたことはない、とのことでした。

197頁、6行:「札幌の民放はAM二社、FM一社」は、「札幌の民放はAM二社、FM二社」の間違いでした。

199頁、-4行(マイナスは最後から数えての行数):「フランスで行われていた」は、「ドイツで行われていた」の間違いでした。

236-237頁の「書記」「速記者」との用語はそれぞれ「書記官」「速記官」に替えます。 238頁に、まだ残っています。

この項目は、京都の弁護士に、ご指摘いただいたもので、以下のように、説明していただきました。
正式の職名は裁判所書記官、裁判所速記官です。1947(昭和22年)に現行裁判所法によって廃止された「裁判所構成法」には「裁判所書記」なる肩書がありました(ので、裁判所書記官は「書記」と呼ばれるのはお嫌いなようです)。また、裁判所速記官も裁判所法に規定のある裁判所職員です(ので、単に速記「者」とされるのはお嫌いなようです)。

279頁、9行:「日本では、詐欺罪はいちばん軽くても三年という重い刑だ。携帯電話一台を搾取しても三年なのである。」を「 日本では、詐欺罪はとても重い刑だ。携帯電話一台を詐取して三年という判例もあった。」に直す。

 ある弁護士のお話ですと、「そうですね。3年というのは少し重いと思います。 ただ、軽くても2年以上ではあると思います。」とのことです。
 その弁護士が関与なさった事案では、各被告人が起訴された事件件数の問題もありますが、
@資格商法による会社ぐるみの詐欺事件で、従業員として顧客勧誘にタッチしていた者:2年
A無銭宿泊を繰り返していた者:2年
というのがあり、詐欺に私文書偽造などが加わると、2年6月という例があったそうです。

 なお、秘書給与詐欺事件で辻元清美氏(社会民主党)が受けた判決は「懲役2年、執行猶予5年」だった。

315頁(安部譲二氏の「解説」)、-4行:「三〇五頁の」は「三〇六頁の」の間違いでした。

99頁2行目「面会は、弁護士でも土日や休日にはできない」は最近、少しは改善されたようです。

東京の弁護士の方に下記のように指摘していただきました。

【その後の改善】
 ご体験時にはこのとおりであったのですが、その後変わっている部分がありますのでお知らせいたします。
 上記刑事施設に関連する法改正に伴って、2007年6月取扱いが変わり、土日・休日に、拘置所での弁護人との面会が次のとおり可能になりました。

日本弁護士連合会と法務省との間の2007年3月13日「夜間及び休日の未決拘禁者と弁護人等との面会等に関する申合せ」に次のとおりあります。
「3 被疑者の弁護人等との面会は,次の各号に掲げるものについて,それぞれ当該各号に定める時間にも実施する。
ア:当該刑事施設に収容された後の弁護人等との初めての面会 土曜日及び日曜日並びにこれと連続する休日における,平日の執務時間と同一の時間
イ:当該刑事施設に収容された後の弁護人等との第2回目以降の面会 土曜日の午前中
(以下省略)」


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