島村英紀 『地震はどこに起こるのか ―― 地震研究の最前線』の書評

『沖縄タイムス』の書評
(1994年1月11日)

 筆者は北海道大学教授で、日本を代表する地震学者。自ら開発した海底地震計を使って世界各地で研究を続けており、一昨年には沖縄研究奨励賞を受賞した。

 一般にはあまり知られていない最新の研究成果を、本書でわかりやすく解説。最前線の研究の様子も伝える。 地震の原因から地震予知の現状まで。かってバラ色の未来が開けたかに見えた予知は、20年を経て再び難しい問題になっている。研究が進むにつれ、以前は分からなかった複雑さが明らかにされてきたからだという。

 「地震ボケ」の日本人に警鐘をならしつつ、「地震は、地球が人類の知恵を試す試練かも」と結ぶ。

共同通信の書評

(共同通信経由で各地の新聞に出た。たとえば福井新聞1994年1月29日、北海タイムス1994年2月1日、秋田さきがけ1994年2月2日、京都新聞1994年2月3日、河北新報1994年2月14日、高知新聞1994年1月24日など)

『地震はどこに起こるのか ―― 地震研究の最前線』

著者は、海底地震計の開発と海底地震の観測に取り組んできた島村英紀・北大理学部教授。

 長年の経験を基に、大地震のの起こる仕組みから、予知研究の現状、世界の海での海底地震観測の様子を自筆の図と分かりやすい言葉づかいで解説している。

 だれも知らないうちに起こり、ほとんどの地震計にとらえられないサイレント(無声)地震など、最新の研究成果も豊富だ。

 「いつか必ず来る地震について、正確に知っているかどうかが、被害を小さくする上で重要だ」との著者の立場がら書かれた、現代地震研究の入門書になっている。

島村英紀著。講談社ブルーバックス。800円。

『日刊ゲンダイ』(東京と大阪で発行している夕刊紙)の書評

(1994年1月27日)
『地震はどこに起こるのか ―― 地震研究の最前線』

 地震研究の最新成果を紹介する新刊書。「地震は太平洋の海底がベルトコンベヤーのように動いて、日本列島の下にもぐり込んで、日本列島が乗ったユ−ラシア大陸の岩盤が壊れて発生する」というのがプレート・テクトニクス理論。

 しかし、最近、日本の巨大地震はそう単純なものではないことがわかつてきた。たどえば、巨大地震なのに地震計に記録されない”ステルス(見えない〉地震”や、太平洋の海底自体が壊れて起こる地震もある。また、日本海に新しい海溝が出来かかっているという説もあるそうだ。

 そうした新説を、日本を代表する地震学者の一人である著者(北海道大学理学部教授)がわかりやすく紹介する。

(講談社 800円)

『電気新聞』(日刊。1994年2月1日)の書評
怖い地震をわかりやすく解説

『地震はどこに起こるのか――地震研究の最前線』島村英紀著
中村政雄(読売新聞論説委員)

私の書棚には十数冊の地震の本がある。地震学者には筆の立つ人が多いようで、どれも読みやすく書かれている。

 だが、この本は抜群である。島村さんは科学雑誌『QUARK』に素晴らしいエッセーを連載されたことがあり、文筆家としても著名だが、内容が素晴らしい。

「目からウロコが落ちる」という言葉があるが、この本を読んで、今までぼんやりとしか理解できなかったことがはっきりわかった。

地震に対する見方が新鮮、しかも最新のデータとご自分の研究成果によって書かれている。

「木の枝を曲げていくと、ミシミシいいだしてから、やがてポキン、と折れますね。

 このポキンが地震です。だから、ミシミシを聞きとることができれば、地震予知ができるはずです」

 ところが、予知は思いのほか難しい。

「病気でいえば、原因がわからずに病状だけを見ているのです。

 これは医学でいえば『症例』が少ないこと、場所ごとに『症状』が違うこと、診断するための『透視』もむずかしく、事後の『解剖』も不可能なせいです」

 こういうタッチで書かれているので、すごく読みやすい。おもしろい。

 地震予知がいまの研究段階では、それほど当てになるものでないことを、実証的に語っている。その分析は鋭い。これは従来の本にはない新鮮さだ。

 だが、最近の地震学の研究の進歩はめざましい。この本を読むとよくわかる。これまで地震の本質がよくわからなかったのは、遠くからしか観察できなかったからだ。日本で起きる地震の85%は海底で起きているのに、陸から見ていてよくわかるはずがない。

 島村さんは安上がりで、小型で丈夫な、高性能の海底地震計を10年がかりで開発した。その苦労も書かれている。

 この海底地震計は、いま世界の科学者から引っ張りだこだが、このおかげで、これまで予想もしなかった新事実が続々と発見されている。

 従来の地震の本にはなかったおもしろい話題もたくさん出てくる。たとえば「忍者のような地震」である。おそろしくゆっくりした地震の波しか出さないので気付かないが、津波を起こしたりする。地震のあと200年たっても振動が残っている例もあるそうだ。

 素晴らしい本だ。地震に関心のない人にも、ぜひ読んでほしい。

(しまむら・ひでき著、講談社ブルーバックス刊、800円)

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この本『地震はどこに起こるのか ― 地震研究の最前線』の第5版後書き
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